ドラマーのための音楽用語辞典

周辺環境事情編

クリック

1)パソコン操作でマウスによって何かを決定したり選択したりする際の1つの動き。

2)英語で時計の音を表現する際の擬音。

3)音楽演奏時、テンポ維持のため鳴らされる音。


この場合3)を指し示す。

大体の場合はヘッドフォンにてドラマーが聞きながら演奏する。出典はメトロノームであり、あくまでも一定のテンポ維持のために使用される。

この「クリック」に関する逸話は、ドラマーならば一晩費やすだけの話題量を保有する。人によっては滂沱と泣かされ、人によっては大幅なスキルアップにも直結する。さらに人によっては、

ドラムをあきらめる。

30代以上の日本人であれば、生まれて初めてカセット録音の自声を聞いた瞬間のショックを覚えておられるであろう。ドラマーにとって第一段階「自分の演奏を録音して聞いた」際の居場所がないようなショックがこれに近いと言われている。

あの恥ずかしさは一体全体どのような現象に起因するのか、現在もなおKGBで研究が続けられているのは周知の通りである。

第二段階がこのクリックである。平たく記述するならば「メトロノームの電子音を聞きながら一定のテンポでドラムを演奏し、メンバーはそのテンポアンサンブルを作る」のだが摩訶不思議なことにまず100%のドラマーは次のような現象に襲われる。

「初体験では演奏にならない」

いかにこれまで自分勝手なテンポ/リズムで演奏していたのか、当該ドラマーは半身不随になるほどのショックを感じる。「絶対に無理だ」などと断言するドラマーもこのあたりでは散見される。気持ちの繊細なドラマーであれば責任を感じて頭を丸める者や「自分を見直してくる」などと言い残し玄海灘にたたずむ者、薄笑いを浮かべつつ繁華街をさまよう者などが典型例として報告される。

昭和59年、「これを乗り越えられるのは全ドラマー人口の30%前後」との調査結果が総務省から発表されるにいたり、国内外の楽器メーカーは電子メトロノームの開発にしのぎを削る。やがて手のひらサイズの「ゼンオン、メトリーナマルチ」が発売され、全ドラマーの必須アイテムとなる。

バブル華やかりし時代、イヤホンで♪=120を聞きつつスキップするドラマーの姿は時代を写す風物詩として当時の「流行雛」にもなった。※そのころの流行語大賞は「走りもたりがはっぱふみふみ」であった。

実際のところ、クリックトレーニングを気が違いそうになるほど続け、3〜5年後を目処に「クリックがない方がリズムが生きる」場合が出てくる。 そこに至る前に勝手な限界を自ら設定してドラムから離れてゆく人間があまりにも多い。貴重な人材が自らの判断で進路を断つという、なんとも悲劇的な思い違いが国産音楽産業のレベル低下を招いたとの指摘がケンウッドデナード武蔵野芸術大学教授より発表されたのは2002年4月のことであった。時を同じくしてエイベックス資本によるドラマー不在音楽が市場を席巻し、ついにドラマーという名詞が死語となってわが国日本は21世紀を迎えるのであった。

ノストラダムスの予言にさえ反旗を翻し、勝ち上がってきた地球人類がその驕りによってあまりに大きな落とし穴に気がつかなかった悲劇は後にシェイクスピアの歌劇にも例えられるようになる。

しかし、ここに来て北日本地区を中心としたドラマーを見直す運動が非営利法人によって活発化、今後の展開には大いに期待が持てる。


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