ドラム講師の嘆き

No.7「ある日のドラムレッスン」

「はい、先週までは4ウェイの複雑な動きをしばらくやってたよね。せっかくだから今日から3週くらい『音楽』の講義内容で行くよ」

「・・・先週までは・・・あれは音楽では・・・」

「うん、音楽ではないよな。どっちかというと『運動』という感じかな?手足の動かす順番の話だけでしょ?音楽じゃないよね」

「あ、そうか・・・そう言われてみればそうですね」

「じゃぁこのギターを使ってやりますよ。例えば・・・そうだなぁ?こんなフレーズがあったと」

「せ・・・先生・・・」

「あ?」

「ギ、ギターめちゃめちゃうまいじゃないですかっ」

「・・・あ、えっとね・・・こう言っちゃぁ失礼かもしれないけどね、 それはほれ、君らの中に俺がいてギター弾いたらそうかもしれないけど、 実際はねぇ、こうして弾くと俺のやってるバンドのギタリストは笑うよ?」

「なぜですか?」

「第一にピッキングが悪い意味で強すぎるんだってさ。『弦を切らないでね』ってよく言われる。次に押さえるテンションが強すぎるみたいだよ。#しちゃうんだよね・・・」

「はぁ・・・深いんですねぇ・・・」

 

「浅いってば」

 

「すんごく弾けるように見えるんですけどねぇ・・・」

「それはね、お前が先週までやってた『叩き方』の授業でさ大体その動きが出来たと。したけどそれがどれくらい『音楽として』優れたものかってえと、さっき言ったように関係ないんだわ。同じでさ俺が『形として』ナンボ弾けてもこれじゃだめなのだよ」

「あ、でもアコギでLIVEされてるんですよね?」

「アコギはまたちょっと違うんだよ。エレキとはね。まぁ弾き語りだから何とか出られるけどね、エレキよりはマシだってだけでまぁ五十歩百歩だよ」

「ははぁ・・・道は遠いですね」

「そりゃそうだよ。芸事なんだからさ。では続きだよ?はい、こうして・・・F△7とEm7を繰り返してアルペジオだよ、テンポはスローで4拍子だね。 はい、これでもってどういったような音風景になる?」

「は?ふうけえ?」

「いや、だからさ、情景とかドラマとか感情とか何か浮かぶか?ってことさ」

「いえ・・・特には・・・」

 

「あぁ?」

 

「いえ、あの、お願いですから怒らないで下さい」

「なんだその条件反射はっ・・・で、本当に何も浮かばないの?」

「ええ・・・」

「じゃぁさ、温度として、この音は熱い?冷たい?」

「音に温度ですか?・・・考えたことなかった・・・」

「考えることじゃなくて『浮かぶ』ことだよ?自然に感じるんだよ」

「えと・・・冷たいのかな?どちらかと言えば」

「そうだよな。じゃあ明るいか?暗いか?」

「どちらかというと・・・暗い・・・かな?」

「そうだべ?じゃぁ楽しいか?悲しいか?」

「・・・悲しい・・・ですね」

「よし、じゃぁ田舎か?都会か?」

「・・・・・都会でしょうか・・・」

 

「ほれ、もう充分だよ。『都会の夜の悲しいの冷たいの』ってな情景が出たじゃん。てことはきっと歌詞もそうなるってことさ。今弾いたギターのフレーズを曲にしたらね」

「あ、歌考えるんですか?ギターだけの音だから何も考えませんでした」

「目の前はギターだけだけど、音楽だからさ。完成形を描くための所作だよ」

「ドラムを考えるのにそこまで考えなければいけないと・・・」

「いや『そこまで』じゃなくて『そこから』アレンジ動機が生まれるんだ。最低限これ位感じないと、ただのドラムを『叩く』人だって。そのままじゃ音楽にならないよ。」

「・・・深いですねぇ・・・」

「だから浅いって、すごく。・・・よし、じゃぁこのフレーズに対してどう叩く?」

「 はぁ?」

「いやだから、お前のバンドでギタリストがこのフレーズ持って来たら、どう叩く?」

「わかりません」

「・・・・って・・・・少しは考えるとかさ」

「いやぁ・・・考えても・・わからないなぁ・・・」

「じゃあ実際バンドの曲作りのときはどうしてんだよっ」

「ドラムマシンが入った音でもらいますから、それをコピーします」

「・・・『ここはこうしたい』とかないのかっ?」

「いえ・・・特に・・・」

「・・・お前いくつだっけ?」

「19です」

「将来どんな風になりたいんだ?」

「プロのドラマーになりたいです」

「kt嗚呼l608苦4kf05笑6;:h6lk愚5lgh6-6:無[7i ・・・・・で、このフレーズにはどう叩く?」

「わかりません」

「一番目の前の目標は何だ?」

「えと・・・わかりません」

「好きな異性のタイプは?」

「・・・わかりません」

「自分てどういう人間だ?」

「わかりません」

「・・・・・・なめとんのか?」

「わかりません」

「今夜何を食いたいんだ?」

「わかりません」

「お前の人生においt」

「わかりません」  

 

・・・・・ 根負けしました。


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