ドラム講師の嘆き

No.9「こんな生徒もいたんですよーだ」

延べ4年くらい通っていた生徒さん(♂)がおられましてね。今思っても、まーず強い印象が残っております。入会してきたときは…ット…えっと、19歳だったと思うんですよ。

第一印象なんですがね・・・・

「何か現代社会を生き抜いて行く上でままならない部位があるべ?」と。

だってっ


1)声が極度に小さい。何かの擬音かと思う。

2)その上で日本語が怪しい。サンコンさんの方がまだ通じる。

3)常時手ぶら。ケツのポッケにスティック1セット。

4)手の爪は延びて真っ黒、でもって服装が毎度ものすごい。↓

@上着の首筋はアカまみれ。固形化しつつある。

Aそして絶対にこれ以上延びないであろうシャツ。

B泥と見える汚れが染みたGパン(黒いオッサンベルト使用〜しかも長い)

C履いているソックスはゴムが伸びた白。
(ただし元々は。現状は醤油色。)

D髪が明白に「汚い」。本当にゴミがついていたりする。


はっきり申し上げますと「落伍者」か又は「気の毒な人生」ですよね。でね、私が何か一つ教えますでしょ?したっけ返事が・・・・・


「ぶ」

 

もう一度書きます。.....................「ぶ」

 

 

本人は「はい」とかって言ってるつもりだったのかな?でも何度聞いても

 

「ぶ」

しかもね、えっと、なんて言うのかな?「笑い出す前の顔」って判ります?「噴出す寸前」とか。あれなの。あの顔でね、出る音声が

「ぶ」

何を言っても。これだけでもカナーリ辛い授業だったんですよ。

「左手は通常右手よりも不器用なんだよ」

「ぶ」

「なので、自分の右手をよ〜く見て、
左手が線対称になるようにしてみ?」

「ぶ」

「うん、さっきよりはいいと思うよ」

「ぶ」

「よし、その状態を維持して、さっきやったHH8分のBD16分音符やってみようか?」

「ぶ」

・・・・・・・・・

「・・・・いや、だからやろうってば」

「ぶ」

.......................シーン。・・・・・・やがて・・・

「・・・どんととぱっ。どんととぱっ」

 

徐々に狂おしい不条理感に襲われてまいります。俺は今誰と話してるんだ?なしてこんなに疲れなきゃいかんのだ?ない壁にはボールもぶつけられんべやっ。今時なら機械相手でも、もう少しマトモな受け答えが出来るど?ってか、そもそもこれ「受け答え」じゃぁないべ?「ぶ」とは何だ「ぶ」とは。

このままではいかんなぁと。やがて私は「ドラムとかの前にさぁ・・・」と思い、色々聞きました。


「バイトって、何やってるの?」

「ぶ」

「え?何?」

「スーパーの魚屋で・・・」

「おお、いいじゃん。どれくらいやってるの?」

「5日目・・・で・・・ぶ・・」

「・・・・続けるんだベ?」

「ぶ」

「あ?」

「もうすぐやめ・・・・ま・・・ぶ」

「なして?」

「話しが・・・苦手なの・・・ぶ・・・」

「・・・と、友達って多いの?」

「いえ・・・」

「少ないのか・・・」

「多いと思い・・・ま・・・ぶ・・・」

「(なしてよ)遊んでるときは楽しいんだろ?」

「あそばない・・・・し・・・」

「(意味がわからんなぁ)音楽のほかに何か楽しいことは?」

「ゲーム・・・で・・・ぶ・・・」

 

処置なしか・・参った・・ご覧の皆さんならば、どうされます?困るでしょ?でも結構闘いましたよ。1年間位は「どうにか人間社会で生きられるよう」って。最終的には負けましたけどね。ええ、「指導力の欠如」と言うご意見は甘受します。

やがて4年ほど経過し、ちゃんと手続きして退会しました。何となくホっとし同時に私なりに彼の今後の人生が気にかかっていたんですよ。

したっけ奥さんっ


その半年後くらいかな?ホール入り口で彼を見ました。友人のバンドか何か見に来たみたい。そっと様子をうかがいますと

・・・・話しをしている…


「おっ、靴買ったの?いいじゃんいいじゃん、かっこいいよおい。でもさ、靴とかに金をかけるようになったなんてお前、さてはあれか?おい、あの子とどうにかうまく行きそうなのか?おい、言えやおい、照れるなって、なぁぁぁにがよ、いいじゃんなんも恥ずかしくねぇよ俺だってこの前の飲み会で酔って踊り狂って大恥かいたんだ、小さいことにこだわるなよおい、あ?・・・・わーははは、やっぱそうか、俺がにらんだ通りだべや、ま、良かったじゃん、祝福するぜ」


・・・・・・・・・???

私が発狂したのでなければ「紛れもない事実」でした。こんなに驚いたこともないし。髪は今風のソバージュがかったショートで、服装は全体的にボーダーっぽい風情、レスキューシューズがぴたっと自然で、ダボTがアクセントになっているんですね。

人間て変われるんですね・・・・その時、講師としての戒めを自ら感じた次第です。

「俺も・・・キッチリとした社会人、会社員としてもっと頑張って見よう・・・」

 

→したっけ俺、会社辞めてやんの


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